対決準備



「ふわぁぁ・・」

「あ、お早う御座います。寝不足ですか?」

海斗が口に手をあてて、欠伸しているのを見て、花梨は言った。

「別に。ただ、昨日帰ってからゲームしてたら疲れた」

「そ、そうですか・・」

花梨が呆れたような声で、返したために海斗の何かに触れてしまったようだった。

「何?僕が夜中にゲームしたらいけない?働いてるんだから美容には気遣えって?」

「あ、あの・・私はそういうつもりで言ったのではなくて・・」

次々とまくしたてる海斗に花梨はいつものようにたじたじとなり、小さくなってしまった。

が、花梨は気になっていたことを思い切って聞いてみた。

「あの、その・・今日の対決・・どうなるのかが心配で・・」

花梨が、小声でそう言うと、海斗は一瞬止まったが、「ああ!」と思い出したような声を出した。

今の今まですっかり忘れていたようだ。

「そういえば、言ってたっけ?でも、俺対決する気なんて毛頭ないし」

海斗は、そう言うとCOLORの店内へと入っていく。

花梨も慌てて、海斗についていきながら、会話をしていった。

「え?で、ですが、朗さんはかなり本気・・でしたよ?」

「だから?対決なんてしなくても俺らが勝つのは目に見えてるでしょ。

そんな意味のない対決に誰が乗るのさ」

一体この自信はどこから来るのかと問いかけたくなるほど、自信たっぷりの声で言い放った。

「そ、そうなのですか?でも、聞いた話では・・

COLORへと出張ホストとしてやって来て・・ここでの売り上げを計るって」

二人は、控え室へと廊下を歩いて進んでいく。

「あいつらが来て何かしようと、俺達の知ったこっちゃないし」

と、控え室の前まで来ると、海斗はドアを開けて、中にいる全員を見るよう促した。

花梨は、開けられたドアの中を覗けば、誰一人「対決」などの言葉を気にしているようには見えない。

爽は爽で、いつもの如く、自分に見惚れ、仁は机に突っ伏し(熟睡中)、ケニーは店長とポーカーをして遊んでいる。

「どう?心配するだけ無駄。分かったら掃除してきたら?」

花梨は、いつものみんなの光景に安心したのか、少し微笑むと「はい」と言って、店内の掃除へと向かった。

(きっと・・あの人達なら大丈夫・・)

花梨は心の中でそう呟いた。

そして、今晩。COLORとSINGLEの対決の幕が切って落とされる・・・・。



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