ホスト探偵 -後編-



「やってられるか・・!」

海斗はかつらを持って、床にたたきつけた。

結局、情報はつかめないまま、控え室へと戻り、着替えた爽と海斗だったが、

すでに彼方のぬいぐるみのことなど海斗の頭の中には消え去っていた。

「うーん、しかし・・彼の見方が少し変わったね、僕は」

爽は、仁に美しいだのなんだの言われたのが嬉しかったのか・・かなりの上機嫌だった。

「ミーたん・・ほんとにどこに行ったんだろう・・」

彼方は彼方で、はぁとため息をついてかなり落ち込んでいる。さらには、体育座りをしていじけだした。

「常連の女性達に聞いてみたところ、広間にいった客はいないとはっきり言っていたけどね」

爽は探偵らしく、聞き込みまでちゃっかりやっていたらしい。

つまりは、お店が始まってからは誰も広間に行っていないということは確実に証明できる。

常連である客は、いつもCOLORが始まる前から立ち並んでおり、広間の前を一度は確実に通る。

また、常連のお客は別扱いとなり、広間近くの場所と決まっている。必ず、その前を通らないと、広間ヘは辿りつけない。

「だとしても、お客さんが気づいていないってことも有り得ないかな?」

彼方は、いじけながら顔を爽へと向けて、論議する。

「そうだとしても、ケニーも見てないと言ってましたから」

どうやらその時相手をしていたのがケニーだったらしい。ケニーに聞いたところ、

「その時のことはよく覚えてまーす。海斗がいなくて、常連の人たちに私、問い詰められて、

かなり 苦しかったでーす。ずっと周りを見渡して探してましたー」

海斗達が、仁に聞き込みをしている間、ケニーが常連の相手を一気に任せられたらしい。

「ほんとにぬいぐるみなんてあったんだろうな?」

海斗は今だ腹立たしさが消えず、今にも暴れだしそうな勢いだ。

「何を言うんだい海斗くん!あるに決まってるじゃないか!ほら、この写真にも一緒に写ってるだろう!」

と彼方が、例のミーたんと共に写った自分の写真を掲げたその時だった。

「何やってんの、こんなとこで」

ちこが大きな袋を片手に持ち、控え室へと入ってきた。

「・・・・おかえり、チーコくん」

彼方は、まだいじけたままで、答える。

「何なん・・店長。いい歳の男がそんな隅っこでいじけてみっともないな」

ガーン

彼方は、たらいが頭に当たったほどのショックを受けた。

そんな事も知らず、ちこは片手に持った袋を開けて、ごそごそと何か探し出した。

「えー・・っと、あ!これや!ほら、店長。これで元気出し!」

ちこはほら!と袋からぬいぐるみを出した。

「ああーーーーーーーー!!!ミーたん!!!!」

ちこの手から、物凄い勢いでぬいぐるみを奪うと、ミーたんにすり寄った。

うんうんとちこは笑顔でその光景を見ていた。

「どういうことか説明してもらえない?」

ちこが後ろを振り返ると、笑顔のまぶしい海斗の姿が。

「な、何やの?ウチは・・ただクリーニングに出してたのを持って帰ってきただけや」

ちこは後ずさりしながら、そう答える。

ちこが、片手に持っていた袋の中身は、クリーニングから帰ってきた衣料(彼方の着ぐるみ)だった。

それを聞き、彼方は思い出したようにこう言った。

「あ、そうだった!クリーニングに出すとか言ってたね!

メーたんの手入れしてたからちゃんと聞いてなかったんだった」

彼方はあははと笑いながら、言った・・が。

「へぇ・・で、それを忘れてただけで片付ける気か?」

その後、当分の間、海斗に思いきりパシリとして使われる彼方の姿があった。



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