「SINGLEは元々売れないホストクラブだったのよね」
小さな事務所の女性:凛堂 さつきが煙草を手にしながら、COLORのホスト達を前にして語る。 SINGLEが元々、小規模なホストクラブで、幼い頃から柳凱兄弟はそこで働いていたこと。 SINGLEの経営がヤクザが占めていたことにより、兄弟共々酷い仕打ちを受けていたこと。 「・・・・・・・・・・・。」 淡々とさつきの口から語られる言葉は、あまりにも衝撃的でその場にいる爽達は、思わず口をつぐんでしまう。 「何か質問とかあって?イケメンホスト君たち?」 さつきは、のほほんと笑顔で尋ねる。 「朗のやつがあそこを離れなれない理由って他にあるんじゃないの?」 海斗は、さつきの目をじっと見て、返した。 一瞬、さつきは真面目な顔つきになったものの、すぐに笑って言った。 「あの子、お気に入りなのよ。京鷹秀弥の。 どういった感情で彼を見てるかは私には分からないけど、異常なまでの執着って言えるんじゃない?」 さつきは一息ついて、さらに続けた。 「あいつらを敵に回さない方法は、あの柳凱兄弟・・というより、柳凱朗に手を出さないことね。つるむのは自由よ」 さつきの話を聞いた後、COLORのメンバーはお互い何も会話を交わさないまま、店へと足を進めていた。 (彼らには今後関わらない方がいいな・・僕の麗しい顔に怪我でもついたら・・!) 爽が一人百面相をしながら、他のメンバーと少し遅れて歩いていた。 色々な恐ろしい考えが巡っているのか、 頭を抱えながらうなっていると、ふと目線の先に 綺麗な女性が座り込んでいるのが見えた。 (おや?) ここは紳士的に助けて、自分の名前をアピールなどといった爽の浅はかな考えが、女性の元へ向かう前に消え去った。 「おいおい、泣いたところでどうにもならねーぞ!」 女性が座りこみ、どうやら泣き崩れている姿を、黒服の男達が数人囲んでいる。 路地裏にも近い上、人通りの少ない道で、いかにもトラブルが起きているといった感じだった。 爽は、助けに入ろうと思ったものの、数人の男達とのガタイと自分を考えれば、一目瞭然。勝てるはずがない。 「爽、遅いデース」 爽が呆然と立ち尽くしている傍へ、COLORのメンバーが寄ってきた。 「あ・・・」 爽が振り返ると、メンバー全員がその現場へと目を向けていた。 爽達が話し合おうとする暇もなく、事態は悪化していた。 「きゃあああああ!」 女性の悲鳴が響き渡る。いつのまにか、ケニーと海斗がその場へと向かっていた。 「っ・・!寝ぼすけくん、僕達は警察に連絡するよ・・!」 今、自分に出来ることは二人にあの場を任せ、自分は通報することだと、咄嗟に爽は判断した。 警察が到着後、すでに黒服の男達はいなくなっており、 現場に残っていたのは、無傷の女性と顔や手足にかすり傷を負った海斗とケニーだけだった。 「だ、大丈夫なん?!あんたら!」 ちこは警察からの電話の通報で駆けつけ、海斗とケニーの傍によった。 「安心してくださーい・・アメリカでは乱闘は日常サヘンジデース」 息も絶え絶えと言った感じでケニーがそう言う。 バッチーン 「アホか!それを言うなら日常茶飯事や!ホストのくせに顔傷つけてどないすんねん!商売道具やろ!」 「ち・・チーコさん・・なら顔を叩くやめてくださー・・い」 ちこは半泣きになりながら、今度は海斗の方へ向き直った。 「あんたも何無茶してんの?!普段人の為に動こうなんてことないくせに」 「別に・・」 疲労感からか、それ以上会話をしようともしない海斗にちこはギャーギャーと叫んでいたが、 その場は一旦帰宅するようにと警察から言われ、全員が心に傷を持ちながら、今日という一日が終わった。 →NEXT |