京鷹 秀弥。京鷹組、組織の参謀とも呼ばれる男。 丁寧な口調とは裏腹に、やる事は盛大で、多数の組の人間に慕われている。 大体のホストクラブの土地はこの組が裏で取引をしていることが多いと言われていた。 SINGLEも例外ではない。 「SINGLEって・・組のもんやったん?!」 ちこが大声をあげると、拓美は“しーーっ”と人差し指を口に当てて、慌てた。 どこで京鷹組に聞こえてるか分からない。 「まぁな・・俺も勤め始めた頃は全然知らんかったんやけど、びっくりやろ?」 拓美は、悠長に笑いながらそう言った。SINGLEがそうだとすると、勿論生まれる疑問がある。 「も、もしかして、このCOLORもその麗しくない団体の土地って言うんじゃないだろうね・・?」 さすがに相手がヤクザと分かると、爽は少し怯えながら全員に問いかけた。 もし、そうだとしたら・・簡単に辞めることが出来ないんじゃ・・ など、悲観的な考えがこの時ばかりは爽の頭の中に浮かぶ。 「あ〜・・そいつは大丈夫や。ここの店長さんはしっかりしてはるわ。 ここだけはどうしても買われへんってあいつらが言ってたからな」 案外、あの着ぐるみ店長はしっかりしているんだという事に、COLORのメンバーは安心と信頼が少しだけ芽生えた。 「・・・・・・。」 海斗はまだ不満そうな顔をしたままだった。 海斗の中でまだ解決しない謎が残っているらしい。 そんな様子を見て、拓美はこう言った。 「俺が言えるんはこれぐらいや。もっと知りたいんやったら、 地主にあったらどうや?多分、俺より詳しく知ってるはずやで?」 拓美は、ボールペンを取り出して近くにあったメモ用紙にさらさらと住所を書いて、店を出ようとした。 と思うと、何故かもう一度こっちへ帰ってきては、 「言い忘れとった・・!ちこ!お前は行ったらあかんで?! お前に何かあったらお兄ちゃん、おふくろと親父になんて言ったらいいか・・!」 とちこの肩を持って、シスコンぶりを発揮していたが・・ちこの飛び蹴りを喰らって、 しぶしぶと(でも何度も「行ったらあかんで」と叫びながら)帰っていった。 というより、無理やり帰されたと言った方がいいのかもしれない・・。 「本当にこんな所にあるんだろうね・・?」 爽・ケニー・海斗・仁の4人は、薄暗い路地をとぼとぼと歩いていた。 拓美の話を耳にして、COLORの店舗の土地を持つ、地主に一度話を聞こうと考えたためだったが、 花梨が彼方に聞いて持ってきた手書き地図では、さっぱり分からず、爽は不安そうに地図を持つケニーに尋ねた。 「マスターとは長い付き合いデース!これぐらいの地図なら分かりまーす!」 と笑顔で答えるケニー。そして、いつしか、薄暗い小さなビルのような所へとたどり着いた。 そろそろ夕方も近いため、周りも赤みがかり・・そのビルを照らす光で、不気味さが一層増している。 四人は立ち止まっているわけにもいかず、中へと入った。 彼方から受け取った紙には、“階段を上がってすぐ”という文字が 書いてあり、書かれるがまま、階段を上がっていった。 階段を上がるとすぐに、茶色いドアが見えた。 そこには、“貸地 きゃらんぱ☆”などといった何とも言えない小さな看板がかかげてあった。 ケニーは息を呑んで、トントンとその戸を叩く。 奥から、「どうぞ?」と女性の声が聞こえ、そっと戸を開けてみた。 戸を開けると、そこは小さな事務所のような感じで、思ったより綺麗に整えられていた。 戸の近くには来客用であるソファと机。そして、その奥には、先ほどの声の主であろう女性がこちらに背を向けて、 会社の社長が座るような椅子へ腰掛けていた。 目の前には、大きなデスクと束になった書類が置かれている。 4人全員が、中に入ったとき、女性はこちらへと体を向け直した。 「いらっしゃ〜い・・あら?凄いイケメンズじゃないの。嬉しいわ〜こんな所に来てくれるなんて」 女性の魅力を大いに表した人といえば一番伝わるのではないだろうか。 その女性は、少し変わった長いパイプのようなもので煙草を吸いながら笑顔でそう言った。 「そんな所で突っ立ってないで、座ったらどう?お姉さんが相手してあげるわ〜」 そういって、近くのソファへと指をさす。 海斗は、ケニーに仁を頼むと、その女性の座っている机まで近づいていき、 「あんたに聞きたいことがある。それだけ答えてくれればここに用はない」 とはっきり言い切った。女性は、しばらく煙草を吸ったまま、遠くを見ていたが、 「いいわよ。まずはそこに座りなさいな。いくらでも聞いてあげるわ。 人もここには滅多に来ないから時間もたっぷりあるわけだしね」 女性は、色気を漂わせながら笑顔でそう言った。 そして、彼らはSINGLEと秀弥との関係を彼女から聞かされることになる。 →NEXT |