「・・ったく、キリキリと働けよお前ら!」
ソファにどかっと座っては、足を組んで明らかに態度の悪い格好で、命令をする代理店長。 「あんた、あれだけ盛大に俺らに敗れといて、何なのその態度? 「海斗、落ち着くでーす!」 代理店長のあまりの無尽さに、キレかけた海斗をなだめるケニー。そう、今回の代理店長は・・。 「朗くん、お酒これでいいのかな?」 「優か?ああ、それでいい。そこに置いておいてくれ」 先日、COLORと対決して負けたSINGLEの店長・・柳凱 朗だった。 「S、SINGLEの・・店長さんを代理にしたんです・・か?」 花梨は、彼方の為に剥いていたリンゴを驚きのあまりにぽろっと落としてしまった。 そもそも、何故あれだけCOLORを嫌っていたSINGLEの朗が、 今回のこの代理店長に関して引き受けたのかが、誰もが知りたい理由だった。 「それがねぇ・・たまたま救急車で運ばれる僕を見てたみたいでね・・彼」 「ま、心優しい俺が?代理を引き受けてやるって言ってやったのさ」 相変わらず、態度の悪いままで朗はCOLORのメンバーに今までのいきさつを話す。 そもそもの狙いは、やたら客が減ってしまったSINGLEの経営状況が危機的であり、 前回結構盛り上がったCOLOR&SINGLEのダブルホストの収入を今回も目当てに来たというのは、 COLORのメンバーには内緒だったりするのだが。。 「SINGLEも、前回に負けないよう新メンバーを加えてCOLORの皆さんと頑張りたいと思ってます!」 優はずり落ちそうな眼鏡をくいっと上げて、笑顔で言った。 優の笑顔にここは誰もの女性が落ちるはずなのだが、 残念ながら周りは男ばかり(ちこはホストに興味なし)なため、気になる点は一つのみ。 「新メンバー?何だい?僕に勝てないからって新しい男を雇ったのかい? でも残念だね。僕に勝てる美しい男なんて、この世に存在しないさ!」 一人キラキラ効果を放ちながら、自分に酔いしれる爽をよそ目に、一人、背の高い男がCOLORへと入ってきた。 「なーんや、えらいふっつーの店やなぁ。こんなんで経営ほんまにやっていけてるん?」 「拓にいーーーー?!」 関西弁のやたら綺麗な顔立ちの男を見て、叫んだのは・・同じく関西弁のちこだった。 男の方は、笑顔だったが・・ちこの方は唖然と口を開けたままで動かない。 「どうもー!俺は庵條 拓美言います。COLORの皆さん、ちこがお世話になってるようで・・」 少々イントネーションが違うようにも聞き取れる標準語で、挨拶をするちこの兄。 ちこは固まったままだったが、ようやく意識を取り戻したのか、拓美に食ってかかった。 「どうも!やあらへんやろ!何やってんねん、こんな東京のホストクラブで!」 ちこにガミガミと言われて、拓美はショックを受けたのか・・少し背を向けて話し出した。 「俺は悲しいでちこ・・昔はお兄ちゃん!って素直に俺の後ろをちょこちょこついてきとったのに・・。 気づいたら“独り立ちや!”言うて・・こんなだだっ広い、人が蟻のように見える都会の隅っこで、 しかもホストのレジやってるなんて・・お兄ちゃんショックでショックで・・!」 泣き真似をしているのか、しくしくと言いながら両手で顔を押さえている。 それを見たちこは再び唖然とするしか、なかった・・・・・。 →NEXT |