「ほら!もたもたせんと、さっさと開店の準備始め!」
開店時間まで、あと2時間。その間に、やることも沢山ある。 ボトルの確認や店内の掃除など・・時間も切羽詰り、ちこはイライラとしていた。 「そういえば花梨さんはどーしたのでーすか?」 いつもなら店内の掃除を花梨が終わらせているはずであるのに・・ 今日はケニーが三角巾を頭に巻き、せかせかとちこに指示を受けながらさせられている。 「さあ?何かよう分からんけど、ちょっと前に出て行ったきり帰ってこーへんねん・・」 その時、花梨はこんな所にいたのだった。 「あの・・占術師さん・・私、どうすればよいのでしょう・・か?」 ある公園の中にぽつんと立っているテントの中。表には、【貴方の運勢占います】といかにも怪しい文字が掲げられている。 「私の大切な人たちが・・戦う事になってしまったんです。大丈夫とは思うんですけれど・・心配で」 そのテントの中には、花梨の姿と机を挟み、水晶玉を両手で覆いながら、 薄紫のマントで口だけが見える怪しい占術師の女性がいた。 花梨は、何かある度にこの占い師の所へ来ては、こうして相談をしに来る。 よく分からない助言をしばしば与えられるが、花梨にとって・・いい助言となっているのは確かだった。 「時が過ぎるのは不変、水が流れるのもまた不変・・」 「は、はい・・・・?」 今回もまた難解な助言が発せられる。そんな言葉にも、動じずに花梨は普通に会話をする。 「でも、水が流れるのは変わることが出来ますよ。水道水も止めることが出来ます」 花梨はにっこり笑顔で、そう言い返した。 「時を止めるのは人間・・水を止めるのもまた・・人間」 「え・・?」 「時を止めることも水を止めることも、不自然。 時と水は、常に流れ続けるもの・・それが与えられた運命(さだめ)」 占い師はそこまで言うと、水晶玉から両手を離し、自分の膝に置いた。 「つまり・・対決は運命で・・誰も止めることが出来ないということですか・・?」 占い師は、口元をあげて微笑んだ。ように花梨には見えた。 何しろ顔が見えないために、確認のしようがない。 そして、対決は避けられぬまま・・行われることとなる。 →NEXT |