ホストクラブが立ち並ぶ街どおりを少し離れた場所に「COLOR」と書かれたクラブが立っている。
まだ開店には早いため、人がほとんどいない。 その店の前に、腰に手をあて、いかにも自分が中心と言わんばかりの男が立っていた。 「うむ。ここだな」 深旗 爽は、このホストクラブを見上げて呟いた。 「海斗くん、悪いんだけど店の前の掃除しといてもらえるかな?」 その頃、店の中では、店長とその店員が話をしていた。 「了解。その代わり、その分の給料上乗せね」 「・・・・今ウチの店赤字だって知ってるくせに・・・うぅ」 店員の菅峪 海斗は小柄で一見可愛らしい顔をしているが、性格が悪いと評判なホストだ。 しかし、そのギャップもあって客も多いため、店としては大事な収入源でもある。 海斗が店のドアを開きかけたその時だった。ふと目に入ってきたのは、店の前に突っ立っている男の姿。 店に人が来るのは至極当然の事だが、ホストに男が来るというのは勝手が違う。 (・・またかよ) 海斗は、大抵同じ理由で尋ねに来る男とこの男が相違ないと感じた。 客が彼氏には内緒でホストに来ていること。 それを知った彼氏が来る。 こういった事はよくある事で、 いちいち相手をしていられないため、無視を決め込んでいる。 海斗の場合、相手が突っかかってくればそれ相応の対処はするようにしているが。 海斗は「ふぅ」とため息をつくと、この男を無視して掃除を始めようとした。 爽はと言うと、海斗の存在にも気づかずに、未だ呟いている。 「僕の美を最大限に発揮できる・・こんな素晴らしい職業に早く就きたかった・・! 今日から僕がNo.1をつとめ、店の主導権を握るのさ!アーッハッハッ!」 最後の方は、もうかなりの大声ではた迷惑だ。 海斗は、そそくさとドアを開け、中にいる店長へと伝えた。 「店長、110番。店の前に不審人物発見。かなりイカレテル模様」 そして、ドアを閉めて中へと入ろうとする海斗だったが・・急にドアが重くなった。 どうやら爽が閉めようとするドアを手で必死に反対の力で引っ張っているらしい。 「ちょっと待ちたまえ!ぼ、僕は・・こ・・ここのじゅ・・うぎょういん・・さ!」 ドアを開けるのに必死で言葉を上手く発することが出来ない。 「う・・うそ・・つけ・・よ!」 海斗も必死でドアを閉めようとする。 「ヘーイ!まだ店を開けるの早いタイムに何をしてるんだい?」 そんな二人の攻防に謎のアメリカ人が爽の後ろに現れた。 「おい、ケニー。このドアにくっついてる不審者を警察に突き出してきてくれ」 海斗はドアの中から、このケニーというアメリカ人に言った。その言葉に反応した爽は、 「僕のような麗人を突き出すとは・・目が悪すぎだね君は!さっきから僕はここの従業員だといっているではないか」 とドアの外から言う。 「確かに少しクレイジーな感じを漂わせてますね〜」 ケニーはお手上げのポーズで、ただ傍観をしている。そんな時、ドアが大きく開いてまた人が出てきた。 「おや〜何かもめごとですか?」 「Oh!マスター!」 「店長・・この不審者をやとっ・・・」 本当に従業員であるのかと海斗は店長に問おうと振り向いた瞬間・・目の前に見えたのは黄色の物体。 「どうだい?この新しい着ぐるみ!ちゃんと尻尾までついてるんだぞー!」 そこには動物の着ぐるみに身を包んだ店長と呼ばれる男が立っていた。 →NEXT |